旧秋田大橋跡

 山形県境にも程近い、秋田県湯沢市と由利本荘市の境に聳える大仙山(920m)に源を発し、秋田県・横手盆地と秋田平野を潤しながら日本海に注ぐ、一級河川・雄物川。
 その河口はかつて土崎港町(現在の秋田市土崎)にあったが、付近一帯は低湿地帯で、洪水が頻発していた。
 洪水防止を目的とした雄物川放水路が、1938年(昭和13年)に通水した。

 それに先立ち、1932年(昭和7年)に「先代の」秋田大橋の架橋工事が始まり、1934年(昭和9年)に開通している。
 以来、新潟と青森を結ぶ大動脈たる国道7号線上に位置し、大きな役割を担うことになった。
 しかし交通量は年々増加し、ここより北寄りの茨島交差点は国道7号線と国道13号線と秋田県道56号線・秋田天王線が交差しているため、秋田県内では一、二を争う渋滞箇所
との汚名も受けた。
 そんな中、秋田市下浜から臨海十字路に至る秋田南バイパスが計画され、工事は進み2003年(平成15年)に全線開通した。その後旧国道は県道56号線となった。
 これに先立ち1981年(昭和56年)には秋田大橋の補修が行われたが、強い潮風と増える一方の交通量に橋が耐え切れないと判断されたようで、1997年(平成9年)に新橋の架橋
工事に着工し、2001年(平成13年)に開通。
 これをもって約67年に及ぶ歴史を新橋にバトンタッチし、旧橋は引退することになった。
 旧橋は、多くの人たちに惜しまれながら、2004年(平成16年)に姿を消した。

 当時(昭和50年度撮影)の航空写真はこちら 川面に映る影から、トラス構造であることが分かる。


 現在の地形図はこちら


  新屋側の袂(の跡)から、茨島方向を望む。
  左側が、現在の橋の開通に伴って付け替えられた県道。
  旧県道の敷地は、側道や植樹帯になっていて、歩道も広めに造ってある。

  まだ「先代の」橋だった頃の印象は、管理人にはほとんどない。
 実家から遠く離れていたし、通う用事もなかったし。
  だが管理人は、平成17年の春から夏にかけて、この新屋側袂の近くに部屋を借りることになった。
 当然ここも朝夕の通勤ルートになった。

  ふーん、ここに旧橋があったのか。 と、超遅過ぎる反応、ではあるが。






 新屋側の袂の跡、まさにここから古い橋が渡されていたであろう地点は、現在公園になっていた。
 秋田大橋の歴史を書いたパネルや、トラスのモニュメントが飾られている。

 橋の架け替えによって、住み慣れた土地からの移転を迫られた人たちもいたのだろう。












  70年近く風雪にさらされた鉄骨が痛々しく思える。
  こんなことを言うのもかなり憚られるが、棺桶に入って眠っているようにも見えてくる。

  「お疲れ様でした」と、心の中で呟いた。









 川面を眺めてみる。

 橋脚も何もかも、全て撤去されているのだが、じっと見ていると、周囲と流れが違うように見える所があり、
旧橋の橋脚があったと思われる。









  橋を渡って、今度は茨島側の袂。

  こちら側には、秋田大橋と並んで秋田小橋がある。
  その昔、羽越線羽後牛島駅から貨物専用の線路が茨島の工場地帯へ向けて通っていたが、それを跨いで
 架けられていた。
  のちに線路は廃止され、軌道跡は歩道として生まれ変わっている。

  その秋田小橋の上。
  現在の橋に架け替えられた後、旧県道は歩道?の延長として利用され、車止めが施されているが、新屋側袂
 と違って旧道の舗装がそのまま残っている。
  白線もうっすらと残っている。




















 こちら側にも、小公園状のスペースが設けられ、トラスのモニュメントが展示されたりしている。
 ただ、新屋側の袂にある物より、一回り小さいようである。



  
  右側が現在の橋。
  現在の横断歩道の延長線上に、旧橋が架けられていたようだ。

  この横断歩道を渡ると、そこに「ある物」を、あなたは発見するであろう...












  フェンスの向こう側が、現在の橋。 左側が新屋方向。右側は茨島交差点方向。
  そして足元に、旧橋時代の路面が延長数十cmのみ残っている。

  これは驚くべき発見である。

  一方は、新しい道路。
  そしてもう一方は河川敷の堤防。
  両者の浸食を受けながらも、辛うじて痕跡が認められる。

  しかし、数十年ののちには、雑草に覆われてしまうのではないだろうか。









 ここ茨島側の袂に立って、新屋方向を眺める。

 引退から早4年、撤去完了からは早1年、しかしかつて旧橋の橋台があった堤防には既に草が茂り、当時の面影は
ない。


 将来、現在の秋田大橋が寿命を迎えたとき、今度は再びこの場所にまた新しい橋が作られるのだろうか...







 現在、秋田市内の雄物川には、JR羽越線・第一雄物川鉄橋や日本海東北自動車道・雄物川橋を含め、10本の橋が架けられている。
 うち最も河口寄りの雄物大橋(国道7号秋田南バイパス)は1986年(昭和61年)開通。
 仁井田地区と豊岩地区を結ぶ秋田南大橋は1998年(平成10年)開通。

 これら新橋の開通や秋田大橋の架け替えにより、渋滞が減ったとする効果を指摘する向きもあるようだが、「以前の状態」を知らない管理人は、現状でも十分渋滞していると
言いたい。
 旧橋があったところに、もう1本、2車線で橋を造って4車線にしてもらいたい。と、毎日思った。

 今後、さらに交通量が増加すれば、橋の増設や既設の橋の拡張工事も当然予想される。

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