仙岩峠旧道

岩手県雫石町の、国見温泉入り口から、ヒヤ潟までを探索した「その2」。
引き続き、いよいよ、秋田県側に入る。

さて、その現状は如何に?

このレポート記事は、現地を探索した2003年5月26日(日中)現在のものです。

その3 秋田県側へ突入!

 32)県境の風景



   ...秋田県側に入る前に、まずは県境の風景をいくつかお目にかけることにする。
   ここには見るべきものがたくさんある。

   まずは左上。「國道仙岩峠貫通記念碑」。当時の建設大臣が自ら筆を取ったらしい。
   真ん中は、その裏面。

   一番右は、その碑の前の道路であるが、これはちと目を疑ってしまった。
   まずこのテトラポッド形状のコンクリートの塊は、何だ?
   車止めであろうことは、想像できるが、何ゆえ県境にこういうものが置かれる(た)のか?
   そしてそれがつい最近、そのうちの1個が、明らかに人為的にずるずると移動されている。
   謎は深まるばかり。

   まだ続く県境付近の風景。




   左、県境より少し岩手県側から秋田県側を望む。
   先ほどの記念碑が右手に見えている。
   上方に数本の鉄塔と、それに支えられた電線が見えるが、なんでも盛岡と秋田を結ぶ高圧の送電線だとか。
   峠の南側から、秋田新幹線「こまち」、そして現在の国道46号線、さらにこの送電線と、人も荷物も電気も山越えしていく。

   中、劣化しつつある白標識。
   長年の雨雪風に晒されてきたのが見て取れる。
   ちなみに「秋田県」と書かれた標識は、残念ながら見当たらなかった。

   右、先程の碑の下に見つけた、標識の破片。
   今回写真撮影はしていないが、白いポールがポツンと1本だけ立っているのがあり、それから外れて飛んだのだろうか?



  33)峠の風景

   ここが、秋田県に入ってすぐの旧道風景。

   降り積もる雪の重みでだろうか?
   フェンスが、針金細工のごとく曲がっている。

   路面には、マンホールが並び、そしてそれらを結ぶようにアスファルトを敷きなおした跡が続く。
   なんでも、この下には光ケーブルが走っているらしい。






   田沢湖町生保内地区方向(おそらく)を望む。

   頭上を、送電線が、谷へ向かって降りていく。










  34)瓦礫通り

   県境を過ぎて下りに入ると、程なくして、道の両側に瓦礫が積まれてくる。

   雪解けの水が流れて、路面がグチャグチャ。









  35)小さな雪山が2つ

   しかも、旧道の道路上に堂々と。

   崖の上から崩れ流れ落ちてきたらしく、表面には泥が付着している。

   向かって左側の(奥の)雪山の両側を、車がエスケープして通行しているようだ。
   私は真ん中を通る。

   しかし、こんなのはまだまだ序の口に過ぎないのだった...

   慎重に車を進める。



  36)崩落

   小規模ではあるが、かつてコンクリートで固められていたと思われる法面、なのに

  すっかり地層がむき出しになってしまっている。









  37)無残

   道路の端に沿って、白いポールが並んでいる。
   かつては、これらにガードレールが取り付けられていたはずであるが、それがどうだ。

   まるごと外されて、藪の中に放置されてしまっている。

   まさかこんなところまできて、こんなことをする愚かな人はいないだろう。

   この辺は風が強く、また冬は何mもの積雪に埋もれる苛酷な環境。
   自然の威力は恐ろしい。




  38)決断

   管理人も人の子、車に乗ったり降りたりカメラを覗いたり、これが結構な労働らしい。
   また初めて見る光景に、多少興奮していたせいもあるのだろう。
   空腹に耐え切れずに、用意してきた食事をとることにして、車を路肩に寄せた。

   さすがにここでは、携帯電話は圏外表示。

   腹ごしらえをしながら、ある決断をした。
   車をここに置いて、あとは自らの足で探索することにした。
   それは一つの矛盾する結果を生むことになる。




  39)ゴミの山

   矛盾する結果とは?

   そう、このように車での通行が困難と思われる個所も、徒歩でなら可能となる。

   反面、あまり遠くまでは移動できなくなる。
   管理人のように体力に自信のない者はなおさらだ。
   いや、逆にそのほうが危険を避けることにもなるので、逆に良いという話もあるが。
   山の単独行が危険というのは、身にしみて分かっている。





  40)投棄物

   道端にバイクが。

   運転者は、まさかここから投身?と一瞬思い、崖下を覗きこんだが、南京錠とチェーンで
  封印されていたので、誰かがここに捨てていったのだろう。
   ナンバープレートも外されていた。

   上の39)のように、倒木や折れた枝や泥が崖を下って道路に積もるのもあれば、
  このように人為的に投棄されるものもある。
   どんな理由があろうとも、許されないのは後者である。



  41)絶句!





   あ〜あ。
   人間って、なぜこういう愚かなことをしでかすのだろうか。
   道路上に、土砂や雪が崩れ落ちてこないように設置している「柵」。
   それが、皮肉にも雪の塊に押し流されて雪山の上に、道路上に転がっている。
   また、うち1つは道路を飛び越えて、崖の向かいの小山にまで飛ばされている。

   この道路はもう使われていないから、棄てられた「道」だから良いのだ、という考え方もあるだろう。

   それにしても、車を置いてきてホントに良かった。
   雪山に道を塞がれて、人ひとり歩くのもやっとだ。
   一番狭いところでは、崖っぷちの、幅0.5mぐらいのところを冷や汗タラタラ流しながらでないと
  通れない。



  42)ほっ。

   カーブを曲がって、いくらか平和な風景に少しほっとした。

   でも地獄はまだ続く。









   43)大小の崩落

   手前、デカイ岩が道路上に鎮座。

   その奥、崖が崩落し車1台分の幅しか残ってない。


   ふと気がつくと、晴れていた空がいつのまにか一面の曇り空。






  44)崩落の跡

   岩盤がむき出しになったところに、草が生えている。

   もう何年かで、木が生えて、自然にかえって行くのだろうか?










  45)路面流出

   秋田に向かって左側の路肩が、幅2m、長さ10mくらいにわたって陥没流出してしまっている。

   その亀裂にポールを差し込んでロープを張っただけの、非常に簡素なバリケードはあるが、
  それも一部ポールが倒れてロープは地面を這っている。

   ここをきっかけに、道路がずるずると谷底に落ちていくのだろうか?






   46)遺物

   ふと見ると、道端に反射鏡の名残。

   てっぺんの反射材の部分は、無くなっているが、「秋田県」と書かれている。










  47)路肩注意

   山側のガードフェンスに、引っ掛かっていた。

   この標識(?)、もともとはもちろん標識として道路端に立っていたのだろうけど...
   哀れ。









   いよいよ佳境に入ってきた感もするが、なにぶん単独行であり、また興奮と疲労のせいで、先に進むことも、とどまって休むことも憚られた。
   (たぶん)誰もいない山中の廃道で、こんなことをしていることが、すごく恐怖に感じられてきた。
   一刻も早く、戻りたくなった。
   自ら希望して、探索に乗り入れたのに、実際来てみてのこの心境の変化は、いったい何なの
  だろう。
   現実を目の当たりにして、興奮が極値に達したせいだろうか?

   気がつくと、車に向かって、来た道を戻っていた。
   そのペースは自分でも驚くほど速い。
   が、峠から下ってきた道を、今度は登るので、すぐに息切れ(笑)

   戻りながら写したのが、右の写真。
   疲れた足で、雪解け水が流れ込んでいっぱいの側溝を何気なく覗くと、その中には蛙の卵が。
   こんな山奥の廃道の側溝にも、自然の営みがある。
   些細なことに感動し、癒された。


   車に戻って、ようやく落ち着いてきた。

   峠越えの旧道の道路状況は、国見温泉分岐点と、県境とで、3様に大きく分けられるようである。
   微細な地割れや陥没個所も一部にあるが、一応維持管理されている岩手県道266号線。
   さらにその上、ところどころ木々の侵略や崖の崩落跡が見られるが、なんとか車での通行が可能な、旧国道岩手県内区間。
   そして、県境を越えて秋田県内のまさに廃道同然の区間。ただしこれは、最後まで探索していないので、その全容は分からない。

   くどいようだが、以上は全て5月26日の三陸南地震発生前の状況であり、地震の後の道路状況は全く分からない。

その4(田沢湖町生保内地区)へ

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